和尚のミニ法話

2016/01/18

正伝の仏法

『花の晨(あした)に片頬笑み  雪の夕べに臂(ひじ)を断ち
代代(よよ)に伝うる道はしも  余処(よそ)に比類(たぐい)は荒磯の
波も得よせぬ高岩(たかいわ)に  かきもつくべき  法(のり)ならばこそ』

正法御和讃という御詠歌の歌詞です。これは曹洞宗の宗歌でもあります。
お釈迦様以来、正しい仏法が代々の祖師方によって脈々と受け継ぎ伝えられてきた様子を詠ったものです。
「花の晨(あした)に片頬笑(かたほえ)み」とは、有名な『拈華微笑(ねんげみしょう)』の故事のことです。
ある時、お釈迦様が大勢の弟子たちを前にして、無言のうちに一本の優曇華を手に取って示されたところ、誰もみなお釈迦様の意とするところがわからず黙っていました。その中で迦葉尊者だけがその真意を理解して微笑まれたのです。お釈迦様は「私が得たところの仏教の根本真実を迦葉に伝える。」とおっしゃいました。こうして迦葉尊者はお釈迦様の代継ぎとなったのです。
「以心伝心」ということです。
正しく伝えるというのはなかなか難しいものです。言葉や文字では微妙なところまでは伝えきれないものです。
私たちは、「言ってくれなきゃわからない」とか「書き留めて残しておいて」とか言いますが、はたしてどうでしょう。
言われなくても、書かれていなくても、五官で感じ取り、自分で考えを巡らせ、本物に近づく努力をすることが大切ですね。
学問の道もそれに通ずるのではないでしょうか。ノーベル賞の大村博士も「弟子を育てる秘訣は教えすぎないことだ」とおっしゃっておられました。
「以心伝心」「不立文字」 宗門で好んで使われる言葉です。